不法就労助長罪とは?2027年4月の罰則強化と「知らなかった」では済まない在留カード確認の実務
外国人雇用で最も重い法的リスクのひとつが不法就労助長罪です。「本人が在留カードを見せてくれたから大丈夫だと思った」「就労できない資格だと知らなかった」——実はこうした言い分は、在留カードの確認を怠るなど過失があれば通用しません。しかも2024年6月に公布された改正入管法により、2027年4月1日から法定刑が「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」に引き上げられます。育成就労制度のスタートと同じ日です。本記事では、処罰される3つの類型、罰金刑がもたらす「外国人を雇えなくなる」リスク、そして採用時・雇用中に企業がやるべき在留カード確認の実務を整理します。
不法就労助長罪とは——「知らなかった」が通用しない3つの類型
不法就労助長罪は入管法第73条の2に定められた犯罪で、次の3つの行為が対象です。
- ① 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせる(不法就労と知りながら雇用を続ける場合を含む)
- ② 不法就労活動をさせるために、外国人を自己の支配下に置く(パスポートを取り上げて働かせるなど)
- ③ ①②の行為に関し、あっせんする(不法就労者を紹介するブローカー行為など)
ここでいう「不法就労」は、オーバーステイなど不法滞在者の就労だけではありません。就労が認められない在留資格(短期滞在など)や、資格外活動許可を得ていない留学生の就労、さらに許可の範囲を超える就労——留学生の週28時間超のアルバイト、在留資格で認められた業務範囲外の仕事——もすべて不法就労です。悪質なブローカーだけの話ではなく、ごく普通の会社が「うっかり」該当してしまう領域だという点が、この犯罪の怖いところです。
そして最大の注意点が過失規定です。入管法は、不法就労にあたることを知らなかったとしても、在留カードを確認していないなど過失がある場合には処罰を免れないと明記しています。「本人が働けると言ったから」「履歴書に問題がなかったから」では足りず、企業側に確認義務を尽くしたことの説明責任があると考えておくべきです。
2027年4月1日から「5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金」に強化
現在の不法就労助長罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金(またはその併科)」ですが、育成就労制度を創設した2024年公布の改正入管法で、「5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金(またはその併科)」への引き上げが決まっており、施行日は育成就労制度と同じ2027年4月1日です。背景には、深刻化する不法就労と悪質な仲介ブローカーへの抑止に加え、育成就労での転籍緩和を見据えて受け入れの適正化を徹底する狙いがあります。
企業にとってのダメージは、刑罰そのものにとどまりません。押さえておきたいのは次の3点です。
- 受け入れ資格を失う:出入国関係の法令違反で罰金刑以上を受けると欠格事由に該当し、特定技能所属機関や育成就労実施者として原則5年間、外国人を受け入れられなくなります。人手不足対策として外国人雇用を軸にしている企業ほど、事業への影響は深刻です
- 両罰規定:実際に手続きをした担当者・役員個人だけでなく、法人にも罰金刑が科されます
- 社会的信用の毀損:摘発・報道による取引先や採用への影響は、罰金額以上のコストになり得ます
なお、日本人と同様の視点でいえば「知らずに雇っていた」ケースの多くは、後述する採用時の確認と雇用中の期限管理で防げます。逆に言えば、そこを仕組み化していない企業は、罰則強化後は今よりはるかに大きなリスクを抱えることになります。
在留カード確認の実務——採用時4点セットと雇用中の期限管理
不法就労を防ぐ実務の基本は、採用時の在留カード確認と雇用中の期限・条件管理の2段構えです。採用時は、必ず在留カードの原本を提示してもらい、次の4点を確認します。
採用時の在留カード確認チェックリスト
- ① 在留資格と業務内容の適合:予定している仕事が、その在留資格で認められる活動の範囲内か(「技術・人文知識・国際業務」で現場作業はできない、など)
- ② 在留期間の満了日:期限切れが近い場合は更新予定を確認し、満了日を管理台帳に記録する
- ③ 就労制限の有無:券面の「就労制限の有無」欄を確認(「就労不可」の場合は④へ)
- ④ 資格外活動許可:裏面の資格外活動許可欄を確認。留学生・家族滞在は原則週28時間以内(掛け持ち先との合算)という上限にも注意
近年は目視では見抜けない精巧な偽造在留カードが出回っているため、券面の確認だけでは十分とは言えなくなっています。出入国在留管理庁が無償提供する「在留カード等読取アプリケーション」でICチップの情報と券面を照合する方法が確実で、2026年6月から段階的に適用されている改正・外国人雇用管理指針でも、こうしたアプリの活用による確認が企業の取り組みとして盛り込まれました。確認した日付・方法・担当者を記録に残しておけば、万一のときに「確認を尽くした」ことを示す材料になります。
雇用中の管理も同じくらい重要です。在留期限が切れたまま働かせれば、それだけで不法就労になります。更新申請中は「特例期間」で就労を続けられるケースがあるものの、期限の見落とし自体が重大な過失と評価されかねません。従業員ごとの在留期限・資格外活動許可・労働時間を台帳やダッシュボードで一元管理し、期限の数か月前にアラートが上がる仕組みを整えておきましょう(在留資格管理の効率化はこちら)。あわせて、雇入れ・離職のたびに必要な外国人雇用状況の届出も忘れずに。
