日本語教育

CEFR(セファール)とは?JLPTとの違いを、これ1本でぜんぶ解説

CEFR(セファール)とは?JLPTとの違いを、これ1本でぜんぶ解説

求人票には「日本語能力試験N4以上」。制度の資料には「A1相当」「A2相当」。同じ「日本語がどれくらいできるか」の話をしているはずなのに、外国人材の世界にはものさしが2つあります。しかも最近は、この2つが同じ書類の中に並ぶようになってきました。2027年4月に施行される育成就労制度では日本語要件が「A1」「A2」というCEFRの言い方で示され、2025年12月の試験からはJLPTの成績書類にもCEFRレベルが表示されるようになっています。

この「A1」「B2」といった記号こそがCEFR(セファール)です。名前だけは見たことがあるけれど、JLPTのN1〜N5と何が違うのか、どちらを基準に採用要件を書けばいいのか——ここがぼんやりしたままだと、「N3を持っているのに朝礼の連絡が伝わらない」といったミスマッチが起こります。本記事では、CEFRとは何かという基本から、JLPTとの設計思想の違い、レベル対応の目安、そして現場での使い分けまでを、これ1本で通してわかるように整理します。

この記事でわかること。①CEFR(セファール)とは何か/②JLPTとは何を測る試験なのか/③2つの「設計思想」の決定的な違い/④N5〜N1とA1〜C2の対応の目安(公式の参考表示つき)/⑤育成就労・特定技能でCEFRがどう使われるか/⑥採用要件と教育計画への落とし込み方

CEFR(セファール)とは——「試験」ではなく「ものさし」

CEFRは Common European Framework of Reference for Languages(ヨーロッパ言語共通参照枠)の略で、日本では「セファール」と読まれます。欧州評議会が2001年に公開したもので、もともとは「ヨーロッパには多くの言語があるが、その習熟度を共通のことばで語れるようにしよう」という発想から生まれました。

ここでいちばん大事なのは、CEFRは試験ではないということです。CEFRを受験することはできませんし、CEFRの合格証も存在しません。CEFRはあくまで、言語の力を測ったり記述したりするときに全員が共有する「ものさし(参照枠)」です。だからこそ、英語のIELTSやTOEFL、日本語のJLPTやJFT-Basicなど、まったく別々の試験の結果を「だいたい同じ土俵」で語ることができます。

6段階のレベル(A1〜C2)

CEFRは熟達度を大きく3つ(A=基礎段階、B=自立段階、C=熟達段階)に分け、それぞれを2つに分けた6段階で示します。職場のイメージとあわせると、次のように整理できます。

レベルCEFRの考え方(要約)職場でのイメージ
A1ごく基本的な表現を使い、ゆっくり話してもらえばやりとりできるあいさつ、自分の名前や出身、決まった形の短い指示が分かる
A2身近な話題について、短く簡単なやりとりができる作業指示を受けて復唱する、遅刻や体調不良を自分から伝える
B1仕事や身近な話題で筋の通った話ができ、想定内の問題に対応できる日々の報告・連絡・相談が自力で回る。トラブルの経緯を説明できる
B2幅広い話題で、母語話者とも無理なくやりとりできる会議で意見を述べる、後輩に手順を説明する、改善提案をする
C1複雑な内容を、流暢かつ的確に運用できる顧客対応、社内文書の作成、込み入った交渉を任せられる
C2ほぼ制約なく、細かなニュアンスまで自在に扱える通訳・翻訳、繊細な言い回しの調整まで担える

CEFRの正体は「Can-do(〜ができる)」のリスト

CEFRの中身は、点数表ではなく「〜ができる」という文(Can-do)の集まりです。「日常生活の身近な話題について、ゆっくりはっきり話してもらえれば、要点を理解できる」——このような具体的な行動の記述が、レベルごと・技能ごとに並んでいます。

しかもCEFRが扱う技能は、聞く・読む・話す(やりとり/発表)・書くと幅広く、2020年の補遺版では「話し手と聞き手の間を取り持つ(仲介)」といった能力も加わりました。「知識をどれだけ持っているか」ではなく、「その言語を使って社会の中で何ができるか」を出発点にしている——これがCEFRの根っこにある考え方です。

JLPT(日本語能力試験)とは——日本語に特化した「試験」

一方のJLPTは、国際交流基金と日本国際教育支援協会が実施する、日本語に特化した検定試験です。1984年に始まり、2010年の改定でいまのN1〜N5の5段階になりました。年2回(7月・12月)、世界各地で一斉に実施され、外国人材の採用や在留資格の要件でも広く使われています。

JLPTが出題するのは、次の3区分です。

ここで注目したいのは、「話す」「書く」が出題されないという点です。JLPTはマークシート方式で、面接試験も作文もありません。つまりJLPTが測っているのは、日本語を受け取る力(読む・聞く)であって、出す力(話す・書く)ではないのです。

※これはJLPTの欠点ではありません。世界数十か国で同じ日に、何十万人もの受験者を、同じ基準で公平に判定する——この規模を成立させるための設計上の割り切りです。合否を厳密に比較できることと、話す力まで測ることは、大規模試験では両立が難しいのです。

いちばん大事な違いは「設計思想」

ここまでで、CEFRとJLPTが「別のもの」であることは見えてきたと思います。ただ、実務で本当に効いてくるのは、レベルの数の違いではなくそもそも何のために作られたのかという設計思想の違いです。

観点CEFR(セファール)JLPT(日本語能力試験)
正体ものさし(参照枠)試験(検定)
目的語学力を共通のことばで記述する日本語力を測って合否を出す
対象言語言語を問わない(日本語にも英語にも使える)日本語のみ
段階6段階(A1・A2・B1・B2・C1・C2)5段階(N5・N4・N3・N2・N1)
扱う技能聞く・読む・話す・書く(+仲介)言語知識・読解・聴解(話す・書くは出題なし)
表し方「〜ができる」というCan-doの文点数と合否(基準点あり)
証明書出ない(枠組みなので受験できない)合格すれば認定結果通知書が出る
向いている用途職務要件の設計、教育計画、成長の見取り図採用要件の線引き、在留資格の証明

CEFRの背骨にあるのは、「学習者を、その言語を使って社会で行動する人として見る」という考え方(行動中心アプローチ)です。だから記述は必ず「〜ができる」になり、「話すのは苦手だが読むのは得意」といった技能ごとのデコボコも、そのまま認める設計になっています。人は完璧なバイリンガルになる必要はなく、必要な場面で必要なことができればいい——そういう思想です。

対してJLPTの背骨にあるのは、「誰が・いつ・どこで受けても、同じ物差しで比べられること」です。回によって難易度がぶれないよう得点を調整する仕組み(尺度得点)を持ち、総合得点だけでなく区分ごとの基準点もクリアしないと合格になりません。公平に比較できる一本の線を引くことに、設計が最適化されているわけです。

ひとことで言えば、CEFRは「何ができるか」を描く地図JLPTは「どこまで分かるか」を測る物差し。どちらが正しいという話ではなく、役割が違うのです。

N5〜N1はCEFRのどこ?(公式の「参考表示」が始まりました)

「N2はB1なのかB2なのか」——長らく現場の感覚に委ねられてきたこの対応関係について、大きな動きがありました。JLPTでは2025年12月の試験から、成績書類の参考情報のひとつとしてCEFRレベルが通知されるようになったのです。合格者が対象で、目安は次のとおりです。

JLPTのレベル総合得点参考表示されるCEFRレベル
N580点以上(合格)A1
N490点以上(合格)A2
N395〜103点A2
104点以上B1
N290〜111点B1
112点以上B2
N1100〜141点B2
142点以上C1

表を眺めると、「合格ライン=そのレベルの下限、さらに高得点なら一つ上」という構造になっているのが分かります。つまり同じ「N2合格」でも、90点の人はB1、112点の人はB2と、実力の幅がかなり広いということ。「N2以上」という条件だけで採用を判断すると、この幅を見落とすことになります。

※もっとも重要な注意点。この参考表示は点数の「換算」ではなく、あくまで目安です。そしてJLPTのCEFR参考表示は、CEFRのうち「言語能力」と「受容活動能力(聞く・読む)」に対応するもので、産出(話す・書く)ややりとりの能力は含まれません。「N2=B1相当」と書かれていても、それは「B1の会話ができる」という意味ではないのです。

ここが、現場でいちばん誤解されるポイントです。「N3を持っているのに指示が通らない」「N2なのに電話に出られない」——こうした食い違いは、本人の力不足ではなく、測っていない能力を、測ったつもりで見てしまっていることから生まれます。指示の伝わりにくさそのものについては「外国人スタッフに指示が届かない本当の理由」もあわせてご覧ください。

なぜ今、日本の企業がCEFRを知る必要があるのか

「CEFRはヨーロッパの話でしょう」と思われるかもしれません。しかしいま、日本の外国人雇用の制度そのものが、CEFRの言い方で書かれ始めています。

①文化庁「日本語教育の参照枠」(2021年)

文化審議会国語分科会は2021年10月、CEFRを踏まえた「日本語教育の参照枠」を報告としてまとめました。日本語の熟達度をA1〜C2の6段階で示し、「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やり取り・発表)」「書くこと」の言語活動ごとにレベルを整理し、具体的なCan-doのリストを示したものです。日本語教育の現場では、これが共通の土台になりつつあります。

②育成就労制度(2027年4月施行)

技能実習に代わって始まる育成就労制度では、日本語要件が「A1相当」「A2相当」というCEFRの言い方で示されています。制度文書を正しく読むために、CEFRの理解が前提になったということです。

場面求められる水準CEFRの目安
育成就労での就労開始前A1相当以上の試験に合格、または認定日本語教育機関の「就労」課程でA1相当の講習を100時間以上受講A1
育成就労 → 特定技能1号への移行時A2相当以上の試験(日本語能力試験N4等)に合格A2
特定技能1号(現行制度)日本語能力試験N4以上、またはJFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)に合格 ※分野ごとの技能試験は別途必要A2

キャリアが上がるほど求められる水準もA1→A2→さらに上へと段階的に上がる方向で整理されています。移行のタイミングそのものについては「技能実習から育成就労・特定技能へ|在留資格別の移行タイミング早見」で詳しく解説しています。

※育成就労の日本語要件・対象分野・監理の仕組みなど詳細は、今後の政省令等で確定します。本記事の内容は、必ず出入国在留管理庁など公的機関の最新情報とあわせてご確認ください。

③JFT-Basicという「CEFR側の試験」

特定技能の日本語要件で名前が挙がるJFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)は、CEFRを土台にした「JF日本語教育スタンダード」に基づく試験で、A2レベルに達しているかを判定します。JLPTのように何段階も判定するのではなく、「生活場面でのやりとりが最低限できるか」を一点で見るテストです。年に何度も受験できるCBT方式で、JLPTとは別ルートの選択肢になります。

現場での使い分け——採用は「試験」、設計は「ものさし」

ここまでの整理を、実務に落とし込みます。おすすめは、2つを対立させず、役割で分けるという考え方です。

とくに効果が大きいのは、求人票や配属基準を「Nいくつ」から「何ができてほしいか」に書き換えることです。

職務要件をCan-doで書く4つのコツ

  • 行動で書く:「N3以上」ではなく「作業指示を復唱して確認できる」
  • 場面を限定する:誰と・どこで・何について話すのかを添える
  • 条件を書く:「ゆっくり話してもらえれば」「メモを見ながらなら」もCan-doの一部
  • 技能を分ける:聞く・読む・話す・書くのどれが必要なのかを明示する

実際に書き換えると、必要なレベルの解像度がぐっと上がります。

現場でやってほしいことCan-doでの書き方目安レベル
朝礼の連絡を理解する決まった形の短い連絡を、ゆっくり話してもらえば理解できるA1〜A2
作業指示を受けて動く手順の指示を聞き、自分の言葉で復唱して確認できるA2
遅刻・体調不良を連絡する簡単な理由を添えて、電話やチャットで自分から伝えられるA2
ヒヤリハットを報告する起きたこと・原因・対応を順序立てて説明できるB1
後輩に手順を教える相手の理解を確かめながら、説明を言い換えられるB1〜B2
顧客からの問い合わせに対応する想定外の質問にもその場で応じ、適切な言葉づかいを選べるB2以上

この表を自社の業務に置き換えて作るだけで、「うちの現場に本当に必要なのはA2までで、B1は将来のリーダー候補に求める水準だ」といった判断ができるようになります。採用のハードルを不必要に上げずに済み、入社後にどこを伸ばすかもはっきりする——これがCEFRを知る最大の実利です。教育の進め方は「外国人材の定着率を上げる|日本語教育とオンボーディングの実践法」もあわせてどうぞ。

まとめ:CEFRとJLPTは「対立」ではなく「役割分担」

最後に、この記事の要点を5つに絞ります。

  1. CEFRは「ものさし」、JLPTは「試験」。CEFRは受験できず、証明書も出ない。
  2. CEFRは6段階(A1〜C2)で言語を問わない。JLPTは5段階(N5〜N1)で日本語専用。
  3. CEFRは「〜ができる」で記述し、話す・書くも含む。JLPTが測るのは読む・聞くだけ
  4. 2025年12月試験から、JLPTの成績にCEFRレベルが参考表示される。ただし受容能力に対応するもので、換算ではない。
  5. 育成就労(2027年4月施行)はA1・A2というCEFRの言い方で書かれる。制度を読むにはCEFRの理解が前提になる。

「Nいくつか」だけを見ていた時代から、「何ができるか」で人材を見る時代へ。ものさしが2つあることは、面倒ではなく解像度が上がるチャンスです。まずは自社の現場で必要な日本語を、ひとつだけCan-doの文にしてみてください。そこから採用要件も教育計画も、驚くほど具体的になっていきます。

とはいえ、いま自社にいるスタッフがどのあたりのレベルなのかは、なかなか把握しづらいものです。JOLの無料ツール「日本語検定かんたん診断」なら、約3分・12問でN1〜N5の目安をチェックできます。まずは現在地を知るところから始めてみてください。

よくある質問

CEFR(セファール)とは何ですか?
CEFRは「Common European Framework of Reference for Languages(ヨーロッパ言語共通参照枠)」の略で、言語の熟達度をA1・A2・B1・B2・C1・C2の6段階で示す国際的な「ものさし」です。欧州評議会が2001年に公開しました。CEFR自体は試験ではなく、「その言語で何ができるか」をCan-do(〜ができる)の文で記述した枠組みで、日本語を含むあらゆる言語に使えます。日本でも文化庁が2021年に、CEFRを踏まえた「日本語教育の参照枠」を報告としてまとめています。
CEFRとJLPTは何が違うのですか?
いちばんの違いは「ものさし」か「試験」かです。CEFRは何ができるかを記述するための枠組みで、合否や証明書はありません。一方JLPT(日本語能力試験)は、日本語の言語知識・読解・聴解を測って合否を判定する試験です。またCEFRは聞く・読む・話す・書くを幅広く扱いますが、JLPTが測るのは読む・聞くという受け取る力だけで、話す・書く力は出題されません。この差が「N3を持っているのに現場で話せない」という食い違いの正体です。
N5〜N1はCEFRのどのレベルに当たりますか?
2025年12月の試験から、JLPTの成績書類にCEFRレベルが参考情報として表示されるようになりました。合格者が対象で、目安はN5=A1、N4=A2、N3=A2(104点以上でB1)、N2=B1(112点以上でB2)、N1=B2(142点以上でC1)です。ただしこれは点数の換算ではなく、あくまで参考表示です。またCEFRの「言語能力」と「受容活動能力(聞く・読む)」に対応するもので、話す・書く・やりとりの能力は含まれない点に注意が必要です。
育成就労で求められる「A1相当」「A2相当」とはどのくらいのレベルですか?
A1は、ゆっくり話してもらえば、あいさつや自分のこと、決まった形の短い指示のやりとりができる入口のレベルです。A2は、身近な場面であれば短い会話ができ、作業指示を受けて復唱する、体調不良や遅刻を自分から伝えるといった、現場で最低限の報告・連絡ができる水準です。育成就労では就労開始前にA1相当、特定技能1号への移行時にA2相当(日本語能力試験N4等)が求められる方向で整理されています。詳細は政省令等で確定するため、必ず出入国在留管理庁など公的機関の最新情報をご確認ください。
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