育成就労

育成就労の転籍ルールとは?本人意向転籍の要件と受け入れ企業の定着対策

育成就労の転籍ルールとは?本人意向転籍の要件と受け入れ企業の定着対策

2027年4月に施行される育成就労制度で、受け入れ企業からの質問がもっとも多いテーマが「転籍」です。技能実習では原則として認められてこなかった勤務先の変更が、育成就労では本人の意向によっても可能になります。「せっかく採用・教育した人材が他社に移ってしまうのでは」という不安の声がある一方で、ルールを正確に見ると、転籍には明確な要件と分野ごとの制限期間が設けられています。本記事では、転籍の2つのルートと本人意向転籍の要件、そして受け入れ企業がいまから取り組める定着対策を整理します。

※本記事は2026年8月21日時点の公表情報にもとづく解説です。転籍の具体的な要件・分野ごとの制限期間は、分野別運用方針や省令等の改正により変更されることがあります。実務では出入国在留管理庁・主務省庁の最新情報をご確認ください。

転籍には2つのルートがある——「やむを得ない事情」と「本人意向」

育成就労における転籍(勤務先の変更)は、大きく2つのルートに分かれます。

① やむを得ない事情による転籍——暴行やハラスメント、賃金の不払いなど、受け入れ側に問題がある場合の転籍です。技能実習にも同様の仕組みはありましたが、育成就労では人権保護の観点から、対象となる事情の範囲を広げ、明確化する方向とされています。このルートには後述の制限期間は適用されません。

② 本人意向による転籍——育成就労で新設される仕組みで、企業側に問題がなくても、本人が希望すれば一定の要件のもとで転籍できるルートです。要件はおおむね次の3つです。

つまり「いつでも自由に移れる」わけではなく、一定期間働き、技能と日本語の試験に合格した人材だけが使えるルートです。しかも転籍先は、育成就労の受け入れ基準を満たした適正な機関に限られます。日本語や技能の水準について詳しくは「CEFR(セファール)とは?JLPTとの違いを、これ1本でぜんぶ解説」もご覧ください。

転籍制限期間は分野ごとに1〜2年——自社の分野を確認する

本人意向転籍の起点となる転籍制限期間は、全分野一律ではなく分野別運用方針で1年から2年の範囲で設定されます。技能の習得に時間がかかる分野では2年、それ以外の分野では1年を基本とする方向で整理が進められており、自社が属する分野がどちらに当たるかで、人材計画の前提が変わります。

受け入れ企業の目線では、次の3点を押さえておきましょう。

制度全体のスケジュールは「育成就労制度がスタート|技能実習からの移行で企業が知るべきこと」を、施行前の手続きは「育成就労の施行日前申請とは?」をあわせてご確認ください。

「転籍されない会社」がやっている定着対策

転籍ルールを前提にすると、企業の打ち手は「制度で縛る」から「選ばれ続ける」へ変わります。ポイントは、転籍を検討する人材の多くが待遇・人間関係・キャリアの見通しのいずれかに不満や不安を抱えているということです。

転籍時代の定着チェックリスト

  • 待遇の納得感:日本人と同等以上の報酬に加え、昇給の基準と時期を本人に説明できているか
  • 日本語学習の支援:転籍要件でもある日本語試験の合格を、会社として応援できているか。学習支援は本人のキャリアへの投資であり、信頼関係の土台になります
  • 定期面談と相談窓口:不満が「転籍の決意」に変わる前に拾えているか。母語で相談できる窓口があるとなお良い
  • キャリアの見通し:育成就労の3年間の先——特定技能1号・2号への道筋を、本人と共有できているか
  • 記録の管理:面談記録・学習進捗・在留期限を一元管理し、支援の抜け漏れをなくせているか

早期離職を防ぐ受け入れ設計は「外国人材の定着率を上げる|日本語教育とオンボーディングの実践法」で、相談体制のつくり方は「失踪・早期離職を防ぐ|受け入れ企業のためのメンタルケア入門」で詳しく解説しています。転籍が制度として認められる時代は、裏を返せば職場の魅力がそのまま人材確保力になる時代です。施行までの期間を、選ばれる職場づくりの準備期間として活用しましょう。

よくある質問

転籍制限期間中は、絶対に転籍されないのですか?
いいえ。転籍制限期間が適用されるのは「本人意向による転籍」だけです。暴行やハラスメント、賃金不払いなど「やむを得ない事情」がある場合は、期間中であっても転籍が認められます。制限期間は労務管理を怠ってよい期間ではなく、信頼関係を築くための期間と捉えることが重要です。
転籍されたら、送出しにかかった初期費用は全額企業の損になりますか?
本人意向の転籍があった場合、転籍元の企業が負担した送出機関への手数料などの初期費用について、転籍先の機関が一部を負担する仕組みが設けられるとされています。ただし全額が補填されるわけではないため、採用・教育コストを守る本質的な対策は日頃の定着支援です。
いま受け入れている技能実習生にも転籍ルールは適用されますか?
本人意向による転籍は、施行日(2027年4月1日)以降の育成就労制度における仕組みです。経過措置により技能実習として在留を続けている間は、現行の技能実習制度のルール(原則転籍不可、やむを得ない場合の転籍のみ)が適用されます。
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