外国人社員の「一時帰国」、企業は何を確認すべき?——みなし再入国許可の1年ルールと、特定技能に定められた帰国休暇への対応

外国人社員の「一時帰国」、企業は何を確認すべき?——みなし再入国許可の1年ルールと、特定技能に定められた帰国休暇への対応

年末年始の帰省、そして2月の旧正月(ベトナムのテト、中国の春節)。外国人社員にとって母国への一時帰国は一年で最も大切なイベントであり、航空券の手配が始まる秋は、現場に「来年の1月に2週間帰りたいのですが」という相談が増える時期です。一時帰国そのものは喜ばしいことですが、手続きを一つ間違えると在留資格を失い、日本に戻って来られなくなる重大なリスクが潜んでいます。鍵になるのが「みなし再入国許可」の仕組みです。さらに特定技能では、一時帰国を希望する社員に有給休暇を取得させることが雇用契約の基準として省令に定められていることは、意外と知られていません。本記事では、みなし再入国許可のルール、特定技能の帰国休暇への対応義務、そして出国前に企業が確認すべきチェックリストを整理します。

※本記事は2026年10月9日時点の公表情報にもとづく一般的な解説です。個別のケースについては、出入国在留管理庁の最新情報や行政書士など専門家にご確認ください。

みなし再入国許可とは——「出国から1年」と「在留期限」、2つの時計が同時に動く

有効な旅券(パスポート)と在留カードを持つ中長期在留者は、出国の日から1年以内に再入国する場合、原則として事前の再入国許可を受ける必要がありません。これが「みなし再入国許可」で、特定技能や技能実習の社員が2〜3週間の帰省をする場合は通常この仕組みを使います。出国時に再入国出国記録(再入国EDカード)の「一時的な出国であり、再入国する予定です」のチェック欄に記入し、在留カードを提示して出国する——手続きはこれだけです。

シンプルな仕組みですが、落とし穴が2つあります。第一に、在留期限が出国から1年より前に到来する場合は、「在留期限まで」に再入国しなければならないこと。特定技能や技能実習は在留期間が1年以下のことが多く、実際の締め切りは「1年後」ではなく「在留期限」になるケースが大半です。第二に、みなし再入国許可は海外から延長できないこと。病気や家庭の事情で帰国が延びても、期限を過ぎれば在留資格は失われ、働きに戻るには在留資格認定証明書の交付申請から呼び寄せをやり直すことになります。数か月単位の空白と費用が発生し、本人にも会社にも大きな痛手です。1年を超える出国の可能性が少しでもある場合は、出国前に地方出入国在留管理官署で通常の「再入国許可」を受けておく必要があります。

特定技能は「一時帰国のための休暇」への対応が雇用契約の基準

もう一つ、受け入れ企業がおさえておきたいのが休暇の取り扱いです。特定技能では、「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」により、外国人が一時帰国を希望した場合には必要な有給休暇を取得させることが、特定技能雇用契約そのものが満たすべき基準とされています。つまり一時帰国への配慮は「福利厚生」ではなく、在留諸申請の審査でも前提となる契約上の約束です。運用上は、年次有給休暇をすでに使い切っている場合でも、無給休暇の取得も含めた配慮が求められます。「有給が残っていないから帰れない」という回答は、制度の趣旨に反すると考えてください。

実務では、有給・無給の別や申請手続きなど一時帰国時の休暇の取り扱いを雇用条件書に明記しておくことがトラブル予防になります。また、母国の祝祭日は国籍ごとに時期が集中します。テトやラマダン明けの大祭の時期には同国籍の社員の帰省希望が重なりやすく、直前になって現場が回らなくなるのは毎年の「あるある」です。国籍別の文化カレンダーの解説記事で整理したとおり、帰省が集中する時期を年初から生産計画・シフトに織り込み、希望時期を早めにヒアリングしておくことが、本人にも現場にも優しい運用になります。

出国前・帰国後の実務チェックリスト——「期限」「カード」「連絡」の3点を書面で

一時帰国の相談を受けたら、次の5点を本人と一緒に確認しましょう。

一時帰国の出国前チェックリスト

  • ① 在留期限とパスポートの有効期限:帰国期間中に在留期限をまたがないか。更新時期が近い場合は、満了日のおおむね3か月前から可能な在留期間更新を先に済ませてから出国する日程に調整する。パスポートの残存有効期間も忘れずに
  • ② EDカードのチェック欄の説明:出国時に再入国EDカードの「みなし再入国許可による出国を希望する」欄へのチェックと在留カードの提示が必要であることを、本人に事前に説明する。チェックを忘れて単純出国の扱いになると在留資格を失う
  • ③ 復帰予定日と緊急連絡手段:帰国期間・復帰予定日・現地での連絡手段(SNSアカウントなど)を書面やチャットで残す。航空便の欠航や家庭の事情で延びそうなときに、すぐ相談できる状態をつくっておく
  • ④ 休暇中の給与・社会保険の説明:無給休暇が長くなる場合の給与計算と社会保険料の本人負担分の取り扱い(復帰後の控除方法など)を事前に説明し、手取りの変化で驚かせない
  • ⑤ 帰国後の確認と記録:再入国したら在留カードで入国日を確認し、面談で近況を聞く。帰省の予定・実績を人材管理の記録に残しておくと、翌年のシフト計画と在留期限管理の両方に活きる

一時帰国を快く送り出し、安心して戻って来られる段取りを組んでくれる会社は、外国人社員から見て間違いなく「選ばれる職場」です。転職が活発になっている今だからこそ、年に一度の帰省対応を、期限管理と定着支援の両面から丁寧に設計しておきましょう。

よくある質問

一時帰国の途中で在留期限が来てしまう場合はどうすればよいですか?
みなし再入国許可で出国した場合、在留期限が出国から1年より先でも、在留期限を過ぎてからの再入国はできません。帰国期間中に在留期限をまたぐ日程は原則として組めないと考えてください。在留期間更新の申請は満了日のおおむね3か月前から可能なので、更新時期が近い社員の一時帰国は「先に更新を済ませてから出国する」か「期限より十分前に再入国する」日程に調整するのが安全です。
有給休暇を使い切っている社員から一時帰国の希望があったら、断ってもよいですか?
特定技能では、外国人が一時帰国を希望した場合に必要な有給休暇を取得させることが、特定技能雇用契約が満たすべき基準として省令に定められています。すでに年次有給休暇を使い切っている場合でも、運用要領では無給休暇の取得も含めた配慮が求められており、「有給が残っていないから帰国は認めない」という対応は制度の趣旨に反します。繁忙期との調整は本人との話し合いで行い、取り扱いを雇用条件書に明記しておくことが大切です。
技能実習生や他の在留資格の社員でも同じルールですか?
みなし再入国許可のルールは、有効な旅券と在留カードを持つ中長期在留者に共通で、技能実習生や技術・人文知識・国際業務などの社員にも同じように適用されます。一方、「一時帰国を希望した場合に有給休暇を取得させる」という雇用契約の基準は特定技能に固有の定めです。ただし技能実習にも3号開始前の1か月以上の一時帰国など制度上の帰国規定があり、どの在留資格でも帰省に配慮した休暇運用は定着の観点から重要です。
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