外国人にも社会保険は必要?加入義務と「年金は掛け捨て」の誤解——脱退一時金の仕組みをわかりやすく解説

外国人にも社会保険は必要?加入義務と「年金は掛け捨て」の誤解——脱退一時金の仕組みをわかりやすく解説

外国人材の受け入れ実務でよく受ける質問のひとつが、「外国人従業員にも社会保険は必要ですか?」というものです。答えはシンプルで、加入義務に国籍は関係ありません。一方で、本人側からは「どうせ帰国するのに年金は掛け捨てでは?」「手取りが思ったより少ない」という不満が出やすく、説明不足が不信感や早期離職の火種になることもあります。本記事では、健康保険・厚生年金など社会保険の加入ルールと、帰国時に保険料の一部が戻る「脱退一時金」の仕組み、そして入社時・帰国時に企業がやるべき説明とサポートを整理します。

※本記事は2026年9月6日時点の情報にもとづく解説です。保険料率・手続き・社会保障協定の発効状況は変わることがあります。実務では日本年金機構・厚生労働省など公的機関の最新情報をご確認ください。

加入義務は「国籍不問」——技能実習・特定技能・育成就労も例外なし

健康保険と厚生年金は、適用事業所でフルタイム雇用される従業員であれば、国籍や在留資格にかかわらず加入させる義務があります。特定技能外国人も技能実習生も、2027年4月に始まる育成就労の外国人も同じです。「実習生だから」「数年で帰国するから」という理由で加入を省略することはできません。あわせて、労災保険はアルバイトを含む全労働者が当然に対象で、雇用保険も週の所定労働時間20時間以上などの要件を満たせば加入が必要です。

外国人雇用で特に意識したいのは、社会保険の加入状況が入管手続きと連動していることです。技能実習計画の認定や特定技能の受け入れ機関の基準では、労働・社会保険関係法令の遵守が求められ、在留期間更新などの審査でも保険料の納付状況が確認される場面があります。未加入・滞納は「法令違反のリスク」にとどまらず、次の受け入れや在留申請が通らなくなるリスクとして跳ね返ってくるのです。なお、ハローワークへの外国人雇用状況の届出は雇用保険の手続きと様式が連動しているため、入社時の手続きはセットで整理しておくと漏れを防げます。

本人への説明で欠かせないのが手取り額の話です。健康保険・厚生年金・雇用保険の本人負担分をあわせると、給与額面のおおむね15%前後が控除されます。送り出し国によっては社会保険の仕組み自体がなじみが薄く、「聞いていた給料と違う」という誤解は、額面と手取りの差を入社前に説明していないことが原因で起きがちです。雇用契約の締結時に、控除の内訳と「保険料は会社も同額を負担している」ことまで伝えておきましょう。

「年金は掛け捨て」ではない——脱退一時金と上限60か月ルール

外国人本人が最も納得しにくいのが厚生年金です。「10年、20年先の年金なんてもらえない。掛け捨てだ」と感じるのは自然な感覚ですが、実際には帰国後に保険料の一部が戻る「脱退一時金」という制度があります。ポイントは次のとおりです。

技能実習3年+特定技能で数年、といった在留が当たり前になった現在、注意したいのが上限60か月を超えて働くケースです。この場合も脱退一時金は最大60か月分で計算されますが、掛け捨てになるとは限りません。加入期間が通算10年に達すると老齢年金の受給資格が生まれ、帰国後に海外からでも将来年金を受け取れます。また、日本と社会保障協定を結んでいる国(フィリピンなど20か国以上)の出身者は、母国の年金加入期間と通算できる場合があります。一方でベトナム・インドネシアなど協定が発効していない国も多く、その場合は脱退一時金が現実的な選択肢になります。特定技能2号への移行など長期就労を見据える人材には、「脱退一時金で清算するか、10年かけて受給資格を得るか」という2つの道を示せると、キャリアの話がぐっと具体的になります。

入社時と帰国時、企業がやるべきこと——説明とサポートのチェックリスト

社会保険をめぐるトラブルの多くは、制度そのものではなく「説明されていない」ことへの不信感から生まれます。手続きの節目ごとに、次のポイントを押さえておきましょう。

社会保険の説明・サポート チェックリスト

  • ①雇用契約時:額面と手取りの違いを数字で示す:控除される保険料の内訳と概算額を、母国語資料ややさしい日本語で説明。「会社も同額を負担している」ことも伝える
  • ②入社時:資格取得手続きを期限内に:健康保険・厚生年金の資格取得届は雇用開始から5日以内。雇用保険と外国人雇用状況の届出もセットで確認
  • ③在職中:給与明細の見方を一度は教える:控除項目を説明し、「引かれているお金が何か分からない」状態をなくす。保険証(マイナ保険証)の使い方、医療費3割負担のメリットも伝える
  • ④帰国が決まったら:脱退一時金の案内を渡す:転出届→出国→2年以内の請求という流れと必要書類(請求書・パスポートの写し・本人名義の口座情報など)を案内。日本年金機構の多言語の請求書様式を活用
  • ⑤長期就労の人材には「10年」の選択肢も:受給資格期間10年・社会保障協定の対象国かどうかを確認し、脱退一時金との比較材料を提供する

社会保険の説明は、一見すると採用や育成から遠い「事務手続き」に見えます。しかし本人にとっては毎月の手取りと将来のお金に直結する、最も関心の高いテーマのひとつです。ここを丁寧に説明できる会社は「きちんとした会社」として信頼され、定着にも確実に効いてきます。入社時のオリエンテーションに、社会保険の説明を1項目として組み込むことから始めてみてください。

よくある質問

技能実習生や特定技能外国人にも社会保険への加入は必要ですか?
必要です。健康保険・厚生年金の加入義務は国籍や在留資格を問わず、フルタイムで雇用する技能実習生・特定技能外国人・育成就労外国人は日本人従業員と同じように加入させる義務があります。労災保険は全労働者が対象で、雇用保険も要件を満たせば加入が必要です。未加入は法令違反であるだけでなく、技能実習計画の認定や特定技能の受け入れ基準、在留諸申請の審査にも影響します。
帰国する外国人従業員の「脱退一時金」はどんな制度ですか?
日本国籍がない人が、厚生年金など公的年金に6か月以上加入し、日本に住所を有しなくなった場合に、出国から2年以内に請求すると加入期間に応じた一時金を受け取れる制度です。支給額の計算対象になる加入期間には上限があり、2021年4月以降は最大5年(60か月)分です。厚生年金の脱退一時金は支払い時に20.42%の所得税が源泉徴収されますが、納税管理人を選任して還付申告をすれば多くの場合その一部が戻ります。
特定技能で5年以上働く場合、年金は掛け捨てになりますか?
必ずしも掛け捨てにはなりません。脱退一時金の計算対象は最大60か月分ですが、加入期間が通算10年に達すると老齢年金の受給資格を得られ、帰国後に海外からでも将来年金を受け取れます。また、社会保障協定を結んでいる国の出身者は、母国の年金加入期間と通算できる場合があります。特定技能2号への移行など長期就労を見据えるなら、「10年で受給資格」という選択肢もあわせて本人に説明することが大切です。
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手続きの説明も、日々の学習も、ひとつの仕組みで

社会保険や在留手続きの説明は、本人の日本語力と信頼関係があってこそ伝わります。JOLは在留資格・在留期限の一元管理と日本語学習アプリで、外国人材の受け入れから定着までを支援します。