育成就労の費用負担はどう変わる?本人負担は「月給2か月分」まで——上限を超えた分は受け入れ側負担になる新ルールをわかりやすく解説
9月1日に育成就労計画の認定申請の受付が始まり、受け入れ準備が本格化するなかで、企業からよく聞かれるのが「結局、費用はいくらかかるのか」「技能実習と何が変わるのか」という質問です。育成就労制度で最も大きく変わる点のひとつが、じつはこの費用負担のルールです。外国人本人が母国の送出機関に支払う手数料等に「月額賃金の2か月分」という上限が新たに設けられ、上限を超える費用は受け入れ側(企業・監理支援機関)が負担する仕組みになりました。本記事では、なぜこのルールができたのか、企業のコスト設計がどう変わるのか、そして認定申請前に確認しておくべきポイントを整理します。
なぜ上限ができたのか——技能実習で平均約54万円だった「借金来日」
技能実習では、来日前に本人が送出機関へ支払う手数料や教育費に明確な上限がありませんでした。外国人技能実習機構の調査では、実習生が来日前に支払った費用は平均で約54万円。母国の物価水準からすると非常に大きな金額で、多くの実習生が借金を抱えて来日するのが実態でした。
この借金が、低賃金でも辞められない・より稼げる場所へ失踪してしまうといった問題の温床になっていると長く指摘されてきました。育成就労制度はこの構造にメスを入れ、「本人負担の上限設定」と「受け入れ側の分担」をセットで導入しています。具体的には次のとおりです。
- 本人が送出機関等に支払う費用(手数料・教育費など)には上限がある——受け入れ企業から支払われる月額賃金の2か月分が目安
- 上限を超える費用は本人に負担させられない——超えた分は受け入れ企業や監理支援機関など受け入れ側が負担する
- 手数料の透明化——送出国との二国間取決めなどを通じて、送出機関の手数料の適正化・見える化が進められる
ポイントは、これが「本人の負担が軽くなる」だけの話ではなく、その分のコストが受け入れ側に移るルールだということです。企業にとっては、採用コストの前提が技能実習時代から変わることを意味します。
企業のコスト設計はこう変わる——給与水準と上限が連動する仕組み
実務で押さえておきたいのは、上限が「月額賃金の2か月分」という相対基準である点です。つまり、自社が設定する給与水準によって本人が負担できる上限額が変わり、受け入れ側の負担額もそれに連動して変わります。
たとえば送出費用の総額が50万円かかるケースを考えます。月給20万円なら本人負担の上限は40万円で、受け入れ側の負担は10万円。月給18万円なら上限は36万円で、受け入れ側負担は14万円——という構造です。賃金設定・送出国の費用水準・受け入れ側の負担額は、切り離して考えられません。
コスト増の面ばかりが目立ちますが、経営目線ではプラスの効果も見込めます。
- 失踪・早期離職リスクの低減——そもそも借金前提の来日が減れば、「借金返済のために失踪する」構造的なリスクが下がります
- 採用競争力——本人負担が軽い受け入れ先は、送出国側で「選ばれる求人」になりやすくなります。転籍が一定条件で認められる育成就労では、選ばれ続けることが定着の前提です
- 費用の透明化——「何にいくら支払っているか」が見える化されるため、監理支援機関・送出機関の比較検討がしやすくなります
予算計画としては、技能実習時代の「監理費+α」という感覚のままでは初期費用を見誤る可能性があります。1人あたりの受け入れ初期費用に「送出費用の受け入れ側負担分」を織り込み、受入れ人数枠と照らして3年分の採用計画を立てておくのが安全です。
認定申請でチェックされる——契約前・申請前の確認ポイント
費用負担のルールは「努力目標」ではありません。育成就労計画の認定審査では、本人が支払った費用の額や内訳が確認され、上限を超えた負担があると認定に影響します。受け入れが決まってから発覚すると計画の作り直しになりかねないため、次の点を早めに確認しておきましょう。
契約・申請前の費用チェックリスト
- 見積りの内訳を確認する:監理支援機関からの見積りで「本人負担分」「受け入れ側負担分」がどう整理されているか。内訳が曖昧なままの契約は避ける
- 本人負担額が上限内かを確認する:設定予定の月額賃金×2か月分と、本人が送出機関に支払う費用を突き合わせる
- 企業と監理支援機関の分担を取り決める:上限超過分をどちらがどれだけ負担するかは取り決め次第。監理支援機関との契約条件として明文化する
- 賃金設定とセットで検討する:給与水準は本人負担の上限、ひいては受け入れ側の負担額に直結する。募集条件と費用分担を同じテーブルで設計する
- 支払記録を残す:誰が・何に・いくら支払ったかの記録は、認定申請や監査での説明の土台になる
費用負担の適正化は、育成就労制度の「人材確保と人材育成」という目的を支える柱のひとつです。コストとしてだけ捉えるのではなく、失踪リスクを下げ、送出国で選ばれる受け入れ先になるための投資と位置づけて、早めに自社の費用構造を整理しておきましょう。
