特定技能の「日本人と同等以上の報酬」とは?審査で見られる比較ルールと報酬説明書の書き方をわかりやすく解説

特定技能の「日本人と同等以上の報酬」とは?審査で見られる比較ルールと報酬説明書の書き方をわかりやすく解説

「最低賃金はクリアしているから、給与設定は問題ない」——特定技能外国人の雇用で、この考え方は通用しません。特定技能の雇用契約には「日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること」という基準があり、在留諸申請のたびに「誰と比べて、なぜ同等以上と言えるのか」を書面で説明することが求められます。しかも、この要件は採用時に一度クリアすれば終わりではなく、雇用している間ずっと問われ続けます。本記事では、審査で比較対象になる日本人の決まり方、報酬に含める手当・含めない手当、そして入社後に同等性が崩れる典型パターンを整理します。

※本記事は2026年10月6日時点の公表情報にもとづく一般的な解説です。個別の申請については、出入国在留管理庁の運用要領・分野所管省庁の資料をご確認ください。

最低賃金クリアだけでは足りない——「同等報酬」は雇用契約の基準

特定技能では、外国人と結ぶ雇用契約そのものに法令上の基準(特定技能基準省令)が設けられており、その柱のひとつが報酬の同等性です。最低賃金は「下回ってはいけない床」にすぎず、審査で問われるのは「同じ仕事を日本人がしたら、いくら払うのか」との比較です。外国人であることを理由に報酬を低く設定することは認められず、この考え方は技能実習でも同様で、2027年4月に始まる育成就労にも引き継がれます。つまり同等報酬は、制度が変わっても残り続ける外国人雇用の基本ルールです。

注意したいのは、比較する「報酬」の範囲です。ここでいう報酬は基本給と毎月決まって支払われる手当が土台で、通勤手当・扶養手当・住宅手当などの実費弁償や福利厚生の性格をもつ手当は含めないのが原則です。時間外労働手当のような変動する支払いで「結果的に日本人より多い」と主張しても、同等性の説明にはなりません。「各種手当を足し込めばなんとか超える」という賃金設計は、審査でも、後述する更新時にも脆いと考えてください。

審査はこう見る——比較対象の決まり方と「報酬説明書」

特定技能の在留諸申請では、「特定技能外国人の報酬に関する説明書」(参考様式第1-4号)という書類で同等性を説明します。このとき比較対象は、おおむね次の順序で決まります。

比較対象の3段階

  • ① 同等の業務に従事する日本人がいる場合:その社員の報酬と比較する。役職・職務内容・責任の程度・経験年数が近い人を選び、差がある場合は「経験年数の違い」など合理的な理由を添える
  • ② 比較できる日本人がいない場合:賃金規程があれば、規程に当てはめて「この職務・この経験ならこの等級・この額」と説明する
  • ③ 賃金規程もない場合:職務内容や責任の程度がもっとも近い日本人社員(年齢・経験年数が近い者)の待遇を手がかりに、個別に説明を組み立てる

実務でつまずきやすいのは②と③です。外国人を初めて受け入れる中小企業では「同じ仕事をする日本人がいない」ことが珍しくなく、賃金規程もないと、申請のたびにゼロから説明を組み立てることになります。簡単なものでも賃金テーブルを整備しておくと、特定技能の申請だけでなく、日本人を含めた採用・昇給の説明にも使える資産になります。また、報酬額だけでなく、賞与・退職金・各種手当の支給条件や福利厚生施設の利用で外国人だけ不利に扱うことも差別的取扱いとして認められない点に注意が必要です。

入社後も問われ続ける——同等性が崩れる3つの典型パターン

同等報酬の要件は、採用時の審査をクリアしたら終わりではありません。むしろトラブルの多くは入社後に起きます。

入社後に同等性が崩れる典型パターン

  • ① 日本人だけ昇給して差が開く:定期昇給やベースアップを日本人にだけ適用し、外国人の給与が据え置きのままだと、在留期間更新の審査で同等性の説明がつかなくなる。外国人社員も同じ昇給・評価の仕組みに載せ、昇給実績を残す
  • ② 最低賃金の改定で賃金バランスが崩れる:毎年10月の最低賃金改定で新人の時給を引き上げた結果、先に入社した特定技能外国人との差が縮む・逆転する。改定のタイミングで外国人を含めた賃金表全体を見直す
  • ③ 届出・審査資料で実態が見える:定期届出や更新申請では賃金台帳などで支払い実態を示すため、「申請書類上の設定」と「実際の支払い」のずれはいずれ表面化する。雇用条件書どおりの支払いと控除の説明を徹底する

共通する対策はシンプルで、外国人社員を「例外」にせず、日本人と同じ賃金制度・評価制度の中で処遇することです。そのうえで、昇給や手当の仕組みを本人が理解できる形で説明しておくと、「評価されていない」という誤解からの離職も防げます。同等報酬は審査対策であると同時に、待遇に納得して長く働いてもらうための定着施策でもあります。

よくある質問

「日本人と同等以上の報酬」はどの金額で比べるのですか?
基本給と毎月決まって支払われる手当を合わせた月額で比べるのが基本です。通勤手当・扶養手当・住宅手当など実費弁償や福利厚生の性格をもつ手当、時間外労働手当のような変動する支払いは、比較の土台には含めないのが原則です。「手当を足せば日本人を超える」という説明は通りにくいため、基本給ベースで同等性を確保しておくことが重要です。
比較できる日本人社員がいない場合はどうすればよいですか?
同等の業務に従事する日本人がいない場合は、賃金規程があれば規程に当てはめて「この経験・職務ならこの等級・この額」と説明します。賃金規程もない場合は、職務内容や責任の程度がもっとも近い日本人社員(年齢・経験年数が近い者)の待遇を手がかりに説明することになります。賃金規程がない中小企業は、簡単なものでも賃金テーブルを整備しておくと申請のたびに説明を組み立てる負担が減ります。
採用時はクリアしていたのに、その後日本人だけ昇給したらどうなりますか?
同等報酬の要件は採用時だけでなく雇用している間ずっと求められます。日本人には定期昇給があるのに特定技能外国人の給与が据え置きのままだと差が開き、在留期間更新の審査で同等性の説明がつかなくなるおそれがあります。外国人社員も日本人と同じ昇給・評価の仕組みに載せ、昇給実績を残しておくことが最も確実な対策です。
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同等報酬のチェックは、一人ひとりの在留期限・契約条件を把握できていることが前提です。

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