在留カードとマイナンバーカードが1枚に——「特定在留カード」運用開始から4か月。採用時の在留資格確認で企業が知っておくべきポイント
採用面接で応募者が差し出したのが、見慣れた在留カードではなく「マイナンバーカードのようなカード」だったら——。2026年6月14日から、在留カードとマイナンバーカードの機能を1枚にまとめた「特定在留カード」の運用が始まり、こうした場面が実際に起こり始めています。取得は本人の希望による任意のため、職場にはしばらく旧様式の在留カード・新様式の在留カード・特定在留カードの3種類が併存します。「見たことがないカード=偽造」と誤解するのも、「券面だけ見て済ませる」のも、どちらも危険です。本記事では、特定在留カードの仕組みと、採用時の確認実務がどう変わるのか、そして一体化で新たに生じたマイナンバーの取扱いの注意点を整理します。
特定在留カードとは——取得は任意、当面は「3種類のカード」が併存する
特定在留カードは、2024年6月に成立した改正入管法・マイナンバー法等にもとづく新しいカードです。これまで外国人社員は、在留期間の更新などの在留手続は地方出入国在留管理局で、マイナンバーカードの手続は住んでいる市区町村の窓口でと、2つの窓口に別々に出向く必要がありました。一体化後は1枚のカードにまとまり、入管での在留手続の際にマイナンバーカード機能の情報もあわせて更新されるなど、本人の手続負担が軽くなります。申請は地方出入国在留管理局のほか、転入届など住居地の届出とあわせて市区町村の窓口でも可能です。なお、特別永住者には「特定特別永住者証明書」という同様の仕組みが用意されています。
受け入れ企業として押さえておきたいのは、次の2点です。第一に、取得はあくまで任意であること。従来どおり在留カードとマイナンバーカードを2枚持ち続けることもでき、会社が切り替えを強制することはできません。第二に、手元の在留カードは有効期間満了日まで引き続き有効であること。このため当面は、2026年6月13日以前に交付された「旧様式の在留カード」、6月14日以降に交付される「新様式の在留カード」、そして「特定在留カード」の3種類が採用の現場に並ぶことになります。カードの見た目が違っても、それ自体は不審の理由にはなりません。
採用時の確認実務——券面で見る3点は変わらない。ただし「ICチップ確認」の重要性が増した
確認の基本は従来と変わりません。不法就労助長罪の解説記事で整理したとおり、採用時は原本の提示を受けて、①在留資格、②就労制限の有無、③在留期間の満了日を確認し、「留学」など就労が原則認められない在留資格の場合は資格外活動許可の有無まで確認します。この3点+αは、新様式の在留カードでも特定在留カードでも券面で確認できます。
一方で、新様式・特定在留カードでは、在留期間の年数や許可年月日など一部の情報が券面に表示されず、ICチップで確認する方式に変わりました。つまり「券面を目視してコピーを取って終わり」という従来の運用では、確認できる情報がむしろ減っています。そこで重要になるのが、出入国在留管理庁が提供する在留カード等読取アプリケーションです。カードのICチップを読み取れば記載事項の詳細を確認でき、精巧な偽造カードでもICチップまでは再現が難しいため、偽造対策としても最も確実な方法とされています。2026年6月に改正された外国人雇用管理指針でも、雇用状況届出の際の読取アプリの活用が盛り込まれました(指針改正の解説記事)。なお、ICチップの読み取りは本人に目的を説明し、同意を得たうえで行いましょう。また、確認後のカードは速やかに本人へ返却します。「会社で預かる」運用は、本人の身分証明手段を奪うことになり認められません。
採用時のカード確認チェックリスト(3種類併存時代版)
- ① 原本で確認:コピーや写真ではなく、必ずカードの原本の提示を受ける
- ② 券面の3点:在留資格・就労制限の有無・在留期間満了日を確認。「留学」「家族滞在」などは資格外活動許可の有無と上限時間(原則週28時間)まで確認する
- ③ ICチップの読み取り:読取アプリでICチップの情報と券面の一致を確認。見た目が新しいカードを「偽造では」と疑う前に、チップの情報で判断する
- ④ コピーの取り方を決めておく:特定在留カードはマイナンバーカードでもあるため、マイナンバーが記載された面は複写しない・番号部分をマスキングするなど手順を統一する
- ⑤ 台帳への記録:在留カード番号・満了日を社内台帳に記録。カードの切り替えや再交付で番号が変わることがあるため、提示を受けるたびに最新化する
マイナンバーの取扱いに注意——「在留確認」と「番号の収集」は切り分ける
一体化で新たに生まれた論点が、マイナンバー(個人番号)の取扱いです。マイナンバー法上、会社が個人番号を収集・保管できるのは、源泉徴収や社会保険の手続など法令で定められた事務に限られます。在留資格の確認はこれに含まれないため、「特定在留カードのコピーを取ったら番号まで写ってしまい、そのまま人事ファイルに保管していた」という状態は、意図せぬ番号法違反になりかねません。在留資格確認の場面と、税・社会保険のために番号を取得する場面は、目的も担当も分けて運用するのが安全です。
もう一つの実務ポイントは期限管理です。カードが何であれ、就労の可否を決めるのは在留資格と在留期間であることに変わりはなく、在留期間更新は満了日のおおむね3か月前からという申請スケジュールも同じです。特定在留カードへの切り替えを希望する社員には、在留期間更新のタイミングで入管窓口に出向く際にあわせて手続すると二度手間にならないことを案内するとよいでしょう。カードの様式が変わっても、満了日の見落としが在留資格の喪失や不法就労につながるリスクは変わりません。むしろ3種類のカードが併存するこれからの数年は、カードの見た目に頼らず、台帳側で在留資格・満了日・カード番号を一元管理する体制の価値が一段と高まります。
